レコーディングとマスタリング
2019年11月01日 13時29分
良いレコーディングと良いマスタリング
オーディオマスタリングで行われる作業、そしてフォトショップの作業。どちらをとっても時間のかかる、忍耐が必要な仕事です。細かい作業の連続は、実際に作業をしているときにどれだけの違いを生むのか半信半疑である場合も多いのですが、できあがってみると、その細かな作業の効果は実感できることの方が多いはずです。やり過ぎる(編集しすぎる)のはよくありませんが、労力は結果として表れるものです。しかし、元となるサウンドが良くなければ、いくらミキシングやマスタリングでどうにかしようとしても、やはり限界があります。
セルフマスタリングはハートで勝負?
ビジネスの世界でも、スポーツの世界でも、「ガッツ」であるとか「気合い」を一番大切だという人がいます。それらの気持ち的要素が大切なことは分かりますが、マスタリングで「気合い」だけ入れてもいい作品はできませんよね?明白です。でも、上達を志すマスタリング素人は何を重視すればいいのでしょうか?
曲それぞれが違う個性、メッセージを持っています。マスタリングをする上で、エンジニアが持つべき「ガッツ」や「気合い」はありますが、それよりも何よりも曲それぞれが持つ「ガッツ」や「気合い」「ハート」といった要素を最重要視してセッティングを詰めることが大切です。
イコライザーやコンプレッサーのセッティングは、アルバムを通じてずっと同じなのでしょうか?それぞれの曲が持つメッセージやハートには感情が含まれています。感情はアルバムを通して一定ではありません。マスタリングエンジニアには、それぞれの曲が持つハートの起伏を、つまみ操作で表すことが求められるのです。
最近はオンラインで激安マスタリングサービスが提供されています。1トラック2000円程度の値段で、音源として仕上げてくれるサービスですが、これまでにお話しした通り、マスタリングの作業は音楽を「フォトショップ」する作業であり、多くの細かい努力がつぎ込まれていなくてはなりません。この激安マスタリングに努力はあるのでしょうか?マスタリングには手間がかかります。それぞれのトラックに、それぞれ別の手間をかけてあげることで、ハートが注入されます。
マスタリング・それぞれの曲をベストに仕上げる
マスタリングエンジニアには、生まれ持った感性が必要だとよく言われます。「生まれ持った」となると、残念ながら、努力や経験でどうこうなるものではありません。しかし、それぞれの音楽が持つメッセージやハートを感じながら、それを引き出すイコライザーやコンプレッサーのつまみ操作をすることならできます。マスタリングにおける「ガッツ」や「気合い」は、それぞれの曲に注ぎ込むものなのです。違いは必ず生まれます。マスタリング・違いが分かること
マスタリングエンジニアにとって、聴けること
は重要です。
プロのマスタリングエンジニアには、
「正しく聞こえるのであれば、それでいい」
という妥協の心は存在しません。
もし、スピーカーとイヤフォン、2つの方法で同じトラックを聴いたとしましょう。特定の箇所でスピーカーからはひじょうに小さなノイズが聞こえるのですが、イヤフォンで聴くとよくわかりません。
この状況は放っておけるものでしょうか?少なくとも放置していい問題ではありません。原因を特定すること、そして、耳も疑わなくてはいけません。モニタリング能力の欠如は、マスタリングエンジニアとして致命的です。
マスタリング・モニタリング能力は鍛えられる
マスタリングという作業を行う上で、モニタリングは必ず磨き上げなければならない能力です。クオリティーの低いスピーカーでサウンドをチェックする必要はありますが、そこにサウンドのクオリティーを合わせるわけでは決してありません。「正しく聞こえるのであれば、それでいい」
は、もしかしたら環境的な要因が、真実を覆い隠しているのかもしれないのです。プロのマスタリングエンジニアには、優れたモニタリング能力が欠かせないのです。