マスタリングの歴史

2018年05月16日 14時51分

マスタリングの歴史について振り返ってみましょう

レコーディングが始まった当初、「レコーディング」と「マスタリング」という作業は、機械的に行われていました。マイクならぬ、アコースティックなホーンに向かって歌ったり、演奏したりというスタイルでした。ホーンから伝わった音のエネルギーは、隣の部屋にある「溝を刻む機械」を動かし、金属や樹脂に音を刻み込みました。レコーディングもマスタリングも同時に行われていたと言えるでしょう。
 
  • 1920年代に入ると、音楽のプロダクションに大きな動きがありました。電気式のマイクやアンプが登場したのです。以前はシリンダー式だったディスクへの刻み込み作業も、電動式に変わりました。この時代の録音とマスタリングは、まだまだシンプルなものであり、レコーディングができる容量も限定されました。
 
  • 1940年代後半になると、磁気テープが登場します。この磁気テープの登場は、レコーディングに革命を起こしました。これは現在の音楽プロダクション方式と、プロセス的にはほとんど変わらない画期的なものとなりました。何しろ磁気テープが登場するまでは、録音とマスタリングが同時に行われていたわけで、時間と空間を超えて録音とマスタリングが可能となったことは、センセーショナルなできごとでした。
 
その後、市販されるレコードの品質や音質は格段に進歩しましたが、マスタリング技術にはまだまだ制約がありました。
 
  • 1950年代から1970年代後半にかけて、マスタリングプロセスに進歩がありました。マルチトラックレコーディングが可能になったのです。基となるレコーディングはモノラル、もしくは2トラックのステレオテープに落とされました。そしてディスクへの書き込みに移る前に、マスタリングエンジニアが音の調整を行いました。
 
これは特にポップソングのレコーディングにおいて、大きな威力を発揮しました。イコライジングを行うことで音の振り幅を変更することで、はっきりとした音を作ることができるようになったのです。この頃からマスタリングエンジニアという「職人」が重宝されるようになりました。ダグ・サックス、ボブ・ラディック、バーニー・グランドマンといった、独立したマスタリングエンジニアが登場したのもこの時代です。
 
当時、メジャーなレコード会社では専門の技術者がマスタリングの作業を行っていました。そのため、マスタリングを外部の人間に任せるようなプロセスの変更には消極的でした。EMIは1960年代後半まで8トラックのレコーダーをアビーロードに設置することはありませんでした。これはマルチトラックレコーダーの市販品が登場してから10年も後のことで、旧態依然とした大企業が、マスタリング技術の進歩を遅らせたと言っても過言ではないでしょう。
 
  • 1990年代に入ると、デジタル技術の波が訪れます。アナログだったプロセスは、デジタル技術にその多くが置き換えられました。デジタルレコーディングされた曲をハードディスクやデジタルテープに落とし、CDにマスターされました。
 
デジタルオーディオワークステーション(DAW)は、多くのマスタリングスタジオで一般的になり、グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を使用して録音されたオーディオを、オフラインで操作、編集することができます。
 
マスタリングでは多くのデジタルツールが使われていますが、実はアナログメディアも未だに大活躍しています。オーディオの他の分野にも言えることですが、アナログ技術がデジタル技術よりも優れている部分が現在でも少なくないのです。
 
マスタリングに決まったミックスレベルはありません。ただ、マスタリングエンジニアの中には、最適なミックスレベルは頭の中に入っています。音楽のスタイルによっても違ってきますが、マスタリングはハウスやテクノ、その他ディスコ型ダンスミュージックにおいては特別な意味を持っています。